検査・治療のこと



動物病院で飼い主さんが支払うお金のほとんどが、検査代、もしくは治療代に含まれると思います。「動物は人間のように保険がないから高い。」誰もが感じたことがあるでしょう。ここでは、日常動物病院で行われる検査、治療がどのような目的なのか、どのような意義があるのかを考えたいと思います。


1.血液検査
2.尿検査、糞便検査
3.レントゲン
4.超音波画像検査
5.病理組織検査
6.細菌培養感受性検査
7.全身麻酔
8.鎮静
9.内服薬
10.注射
11.外用薬
12.点眼薬
13.処方食
14.手術
15.浣腸
16.シャンプー
17.化膿創切開排膿洗浄
18.入院
19.通院
20.皮下補液
21.点滴
22.エリザベス・カラー
23.包帯
24.貯留液の穿刺排液
25.爪切り
26.耳そうじ
27.フルオレセイン染色検査
28.眼圧測定
29.膣スメア検査
30.ACTH刺激試験
31.甲状腺ホルモンの検査
32.視力、聴力の検査
33.固有知覚反応
34.手押し車反応 体位伸筋突伸反応



おまけ(当院の看板猫)


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1.血液検査

 「動物は話すことができないから、動物の苦痛をわかってあげるために検査はとても重要」
 よく聞くフレーズですね。確かにその通り、そしてその検査の代表選手がこの血液検査でしょう。


検査材料である血液を採取するには、前肢、後肢、首、耳などの静脈に針を刺して採血します。動物にとっては痛みと恐怖が伴います。また、動物が暴れると静脈に確実に針が入らないので、しっかりした保定が必要です。時にこの押さえられるのが嫌いな動物もいます。
さて、痛く、嫌な思いをして採血する価値はあるのでしょうか?


● 血液は情報の宝庫である。
   血糖値、貧血、腎臓機能、肝臓機能・・・・血液の中には、様々な情報があります。これだけ身体のあちらこちらの情報がわずかな量の材料に詰まっている、これは体中をくまなく巡っている血液だからこそ得られるものです。

● 動物に負担なく安全に材料を得ることが可能。
   手術のように麻酔をかけて身体に傷をつけることなく、検査材料(血液)が得られるのは、とても大きなメリットです。つい忘れてしまいがちですが、このことは大変重要です。

そうは言っても、動物には痛い怖い思いをしてもらわないとならないし、検査代もかかります。 「肉体的、精神的、金銭的負担」 VS 「検査で得られる情報の意義」 の比較で、後者が勝る時に検査をするようにしています。


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2.尿検査、糞便検査

尿検査、糞便検査ともに日常診療で頻繁に行われる検査です。先日、私自身が病院に行ったら、症状を告げる前に紙コップを渡され、「トイレで尿を採ってきてください。」と言われました。その病院の良し悪しは別として、それだけ簡単に行える検査ではあります。

● 尿、便とも体が不必要なものとして排泄したものである
  
 逆に言えば、身体にとって不必要なものしか含まれないはずである。そこに本来必要なものが含まれるのは、異常である。(例:血便、蛋白尿など)

● サンプルの採取が簡単
   
もともと排泄するものなので、採血のように、身体の中に存在するものをとってくるわけではない。動物にとっては極めて負担の少ない検査と言えます。ただし、身体の中に採りにいかなければならない場合もあります。(尿カテーテルによる採尿、膀胱穿刺など)

● 血液に比べると、得られる情報が限定される
   
尿は腎臓、尿管、膀胱、尿道などの泌尿器系臓器、便は胃、腸、膵臓などの消化器系臓器の機能の指標になります。

何といっても、検査材料(尿、便)の採取のために、動物に負担をかけなくて済むのがこれらの検査の利点です。子犬、子猫、下痢をした時、排尿回数が多い時、水を飲む量が多い時などの症状で来院する際は、近い時間に排泄した尿、便があればそれを持ってきていただくと、貴重な情報源になることがあります



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3.レントゲン

 動物の診療のみならず人間の診療でも頻繁に行われるレントゲン撮影。今回は、このレントゲン撮影検査の意義について書いてみたいと思います。

● 「影」を見る検査です。
 病気になっている部分の形態(大きさ、形、色、細胞の変化など)を調べる時に、
影を見る直接目で見る顕微鏡で細胞を見る の順で診断の精度が高くなります。では、顕微鏡で細胞を見る検査だけすればいいのではないか?と思われる方もいるかもしれません。確かに、その通りです。ただ、それは診断をつけるためだけであって、治療にはなりません。病変部の細胞を採取するのには、その細胞がある現場まで行かなければなりません。その病変部が体表にあれば容易いことですが、身体の奥深くの場合は、そこに到達するために身体を切り開かなければなりません。全身麻酔をかけて手術を行うことになります。となると、動物にも負担がかかってしまいます。
 そこで、直接目で見たり、細胞を採取できない部分の診断の手段として、「影」を見るレントゲンの出番となります。直接目で見たり細胞を顕微鏡で見る検査には劣りますが、全く何も見えないよりも影だけでも見えるということは、診断をつける上で、大変有意義な情報が得られることになります。

● 動物にかかる負担が少ない。
 撮影はほんの数秒で終わります。その間、動物が動かないことが条件になるので、人が抑えることになります。撮影部位や診断の目的、動物の正確によっては鎮静もしくは麻酔が必要になることもあります。ただ、身体に傷をつけなければならないことは、ありません。
 また、撮影時に浴びる放射線の量は、動物の健康状態には全く影響しません。

● 「影だけしか」見えない検査です。
  何も見えないよりは、影だけでも見えた方がいい。しかし、あくまで「影」なので、色、固さなどは区別できません。また、影となるべきものの周囲に水分が多いと、影がはっきりしないこともあります。(例:腹水が溜まっていると、肝臓,腸、脾臓などの腹腔内臓器がはっきり写らない)
すべてがわかる万能な検査ではありません。
  ただ、昔から数多くの学者が数多くの症例を分析し、どのような病態の時に、どのような影が写るか、というパターンは研究されています。ただの影ですが、たくさんの情報を含んでいる影です。

 「撮影は一瞬で終わり、たった1枚の写真なのに検査料が高い」「レントゲン撮ったのに何もわからなかった」「ついこの前レントゲンとって何も言われなかったのに、今日いきなり癌で転移していると言われた」よく聞かれるフレーズです。確かにその通り、お気持ちよくわかります。直接目で見えない部分の影だけでも写してくれる利点はとても大きい。しかし、すべてを見せてくれるわけではない。そこを理解していただければ、少し気持ちが楽になるかな?


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4.超音波画像検査

 前述のレントゲンと同じく、直接目で見えない部分の「影」を診断する検査です。超音波を組織に照射して、その反射した音波を画像化したものです。生体には害はありません。

● 「影を見る」検査であり、「影しか見えない」検査である。
 この点はレントゲン検査と同じです。何も見えないよりは、影だけでも見えた方がはるかに有益な情報が得られます。しかし、それですべてがわかるわけではない。

● 動物にかかる負担が少ない。
 身体に傷をつけることなく行える検査です。ただ、レントゲンに比べて時間がかかるので、しばらくの間大人しくしていてもらわないとならない。その動物の性格によっては、鎮静させることもあります。

● 臓器の内部が描出できる。
 たとえば、膀胱は、レントゲンだと卵型の白い塊に写ります。しかし、超音波検査では、膀胱の中に尿が溜まっているかどうか、膀胱結石があるか、ポリープや腫瘍がないか、膀胱壁の厚さ、膀胱内面の粘膜の状態、など内部の状態に関する情報がより多く得られます

● 動きがわかる
 レントゲンがその瞬間の影なのに対して、超音波は時間とともに動く影を連続して描出できます。心臓を検査するのにとても有益な機能です。

● 一度に検査できる範囲が狭い。
 超音波のビームを一度に当てられる範囲は限られています。そのため、広い範囲の検査をするためには、超音波を当てる位置を少しずつ変えて全体を描出する必要があります。このため、レントゲンに比べて検査に要する時間がかかります。

● 水に強く、空気に弱い。
 超音波は水があってもよく通ります。したがって、水分を含んでいる臓器(胆嚢、膀胱)などの内部を検査するのに有効です。逆に、空気を多く含む臓器(肺)は、苦手です。あと、骨も苦手です。

● 毛を剃ることがあります。
 飼い主さんにとっては、とても抵抗があると思います。気持ちもよくわかります。ただ、毛があるかないかで検査の精度が大きく変わります。毛を剃らなかったがために、重大な情報を見落としたのでは、検査の意味がありません。毛を剃ることで、寒くてカゼをひいてしまうのではないかと心配される方もおります。それは、大丈夫です。
ぜひ、ご理解とご協力を。

 
レントゲンと並んで、身体に傷をつけずに身体の中の影を写し出す有効な器械です。その特長もレントゲンとは異なります。毛を剃る必要がなければ、本当に完璧な検査器械なんだけど・・・。ヒトは皮膚に毛が生えてないからいいよね、うらやましい、と思います。


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5.病理組織検査

 臓器または腫瘤の一部あるいは全体を採材し、細胞を調べる検査です。採取した細胞を染色し、観察しやすくしたうえで顕微鏡で検査します。病気は細胞の変化によって発生します。病理組織検査の結果は非常に信用度の高いものです。当院では、専門機関に依頼し、病理医に診断していただいています。

● 細胞レベルでの異常がわかる。
 見た目は普通でも細胞を調べると異常が発見される場合があります。また、見た目は良性に見える腫瘍が実は悪性であったり、逆の場合もあります。

● 診断の精度が高い
 細胞を検査するということは、身体の中で発生した異常を、最も詳細な部分まで検査することになります。それ故、診断の精度は非常に高く、ほとんどの場合
「確定診断」が得られます。

● 材料を得るために、現場まで到達しないとならない。
 病変部が体表にあれば、現場に着くのは苦労しません。しかし、胃の中の病変であれば、内視鏡が必要であったり、胸腔内であれば開胸手術が必要であったり、病変部に到達するのが大変なこともあります。

● 材料を得るためには、身体の一部を切り取らなければならない。
 切り取る組織の大きさ、数は、病気の種類や病変部の場所によります。腫瘍性病変の場合は、腫瘍の摘出も同時に行う場合がほとんどです。動物の身体にかかる負担は、そのケースによってさまざまですが、ほとんどの場合問題になるようなことはありません。

針生検
 病変部に細い針を刺して吸引し、針の中に入った細胞を検査します。動物にかかる負担が少ないメリットがありますが、採材される細胞が少なく正確な診断ができないこともあります。だた、確定診断が可能なケースもあります。

 病理組織検査は今までに紹介した検査に比べてなじみが薄いかもしれません。費用もかかるし、結果が出るのに時間もかかる・・・不便なことも多々ありますが、「確定診断」が得られることは非常に有意義です。特に腫瘍病変の場合、治療のために摘出することも多く、今後の治療方法の決定に大変重要な情報が得られます。手間と時間、費用ががかかりますが、その結果得られる情報の意義はそれを上回るものです。


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6.細菌培養、感受性検査

 
我々が生活している環境の中には、数え切れないほどの細菌が存在します。そしてその細菌たちは時として動物の身体の中に侵入し、そこで増殖を試みます。動物の身体には、細菌が体内に侵入しないように、また、侵入しても速やかに細菌を殺し、排除するようにさまざまな機能が備わっています。それでも時として、細菌の侵入そして増殖を許してしまうことがあります(感染)。その場合、身体に何らかの変調を来たす、つまり病気になってしまいます。細菌感染に対しては、細菌を殺す薬、すなわち抗生物質で治療します。

● 細菌培養検査とは
 細菌が存在するのかしないのか、もし存在する場合どのくらいの数が存在するのか、そして
その細菌はどの種類の細菌なのか、を特定する検査です。

● 方法は?
 検査材料(尿、膿、鼻汁など)を細菌が増殖しやすい環境におき、しばらく時間をおいた上で(通常48時間位)判定します。当院では検査センターに依頼しています。

● 細菌感染との戦いは、病気と戦う上で最重要ポイントのひとつである。
 「20世紀最大の発見はペニシリン(抗生物質の一種)である。」という識者がいるのですが、私もその通りだと思う。逆に言えば、
それだけ人類や動物はは細菌感染に苦しめられ続けてきたのです。抗生物質が多様化している現在でも細菌感染はあらゆる病気に関わっていることには変わりありません。

● 細菌は抗生物質に耐性を持つようになる。つまり抗生物質が効かなくなる。
 細菌とて生きるのに必死です。なんとか抗生物質に負けずに生き抜こうと努力します。そして、ひとたび抗生物質に抵抗する術を会得すれば、持ち前の繁殖力でいっきに抗生物質の効かない仲間(耐性菌)を増やします。院内感染で有名な「
MRSA」は、正式には、「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」。これも耐性菌です。

● その細菌に対して、有効な抗生物質と無効な抗生物質がある。
 それを調べるのが感受性検査です。つまり、
その細菌に対してどの抗生物質が効くのか効かないのかを判断する検査です。細菌培養検査と組み合わせて行うことが多く、当院では検査センターに依頼します。3〜4日時間がかかります。

 科学として正確に対処するのであれば、抗生物質を処方する前に、すべてこの細菌培養感受性検査を行い感染の有無を確認の上、その細菌に対して感受性のある(有効な)抗生物質を処方するべきでしょう。しかし、現実問題として、検査結果が得られるまで治療が開始できない、費用がかかる等、障害もあります。実際、日常診療では、感染が心配される時は、
広域スペクトルの抗生物質(いろんな細菌に有効)を処方し、それでも感染が続くようであれば、細菌培養感受性検査を行う、という流れが多いです。
 
「細菌感染は確かに怖い。でも抗生物質の使いすぎはもっと怖い。」抗生物質を処方する立場にいるものとして、常にそれは意識していたいと思います。


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7.全身麻酔


「全身麻酔」。この言葉から連想されることを並べれば、“恐ろしい”、“危険”、“身体に負担になる”と悪いイメージのものばかりとなるでしょう。それは実際、正しい認識でもあります。全身麻酔がかかっている状態では、動物は意識もなければ痛みも感じません。これは日常の起きている状態と比べると、「死」に近い状態です。いくら科学的根拠があり、厳重に状況を管理していても、麻酔が“危険”であることは確かです麻酔を施す我々にとっても、全身麻酔は“恐ろしく、危険”な行為であると感じます。では、どうして恐ろしく危険な麻酔をかけるのでしょうか? もちろん、全身麻酔をかける利点もあるからです

全身麻酔とは
広辞苑によれば、「中枢神経系を麻痺させることによって、全身的に意識・感覚・自発運動を消失させる麻酔法」
簡単に言えば、意識がなく、痛みがなく、動かない状態にすること。

どんな方法で麻酔をかけるの?
注射薬吸入麻酔(ガス麻酔)がほとんどです。処置を行う動物の種類、大きさ、年齢、一般状態、処置に要する時間を総合的に考え、どの方法でどの麻酔薬をどの位使うかを決定します。
注射薬で麻酔状態にして、ガス麻酔で麻酔状態を適切に維持するケースが多いです。

危険率は?
 健康な動物であれば、
数千〜数万分の1位、交通事故に遭うくらいの確率です。病気の状態や年齢により危険率は変わってきます。
 当院では、
動物用生体モニター(患者監視装置)で、心電図、心拍数、呼吸数、カプノグラム、終末呼気炭酸ガス濃度、吸入麻酔薬濃度、動脈血酸素飽和度(SpO2)、血圧、脈拍数の状況を常に把握し、異常が発生した時にはすばやく認知し、対応する体制を整えております。
 さらに、
陽圧人工呼吸装置により、自発呼吸停止時には、速やかに人工呼吸に移行できるように準備のしております。
 それでも、残念ながら100%安全ではありません。


なぜ、危険を冒してまで麻酔をかけるのか、利点はあるのか
もちろんあります

@ 全身麻酔は動物の意識や痛覚を失わせる。その結果、
動物は医療行為に伴う肉体的、精神的苦痛から開放される。
A 全身麻酔のかかっている状態の動物に対しては、
医療行為が迅速に、かつ確実に行うことができる。

全身麻酔をかけて行う医療行為のほとんどが、麻酔をかけなければ行えない行為です。
手術など痛みを伴う行為に関しては、麻酔をかけなければならないことが理解しやすいと思います。しかし、ある種の検査など、痛みを伴わない行為に関しては麻酔をかけることに抵抗を感じる飼い主さんも少なくないようです。直接痛みがなくても、意識がある状態ではできないことがあります。そのような行為を麻酔なしに無理に行えば、確実なこともできず、時間がかかり、その間動物は恐怖にさらされていることになり、何もいいことはありません。


最後に
全身麻酔は、恐ろしく、危険です。
でも、たぶん飼い主さんが感じてるよりはずっと危険率は低いと思います。でも、残念だけど100%安全ではない。
全身麻酔をかけて行う医療行為は全身麻酔をかけなければ行えない行為です。
全身麻酔をかける危険性、麻酔をかけて行う医療行為で得られる情報、結果とその価値、麻酔下での医療行為を行わなかった場合今後予想される危険性、これらを総合的に判断して、最善と思われる治療法を選択してください。


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8.鎮静

 前述の麻酔は、痛みを伴う処置を行う際に適応する医療行為でした。それに対し、鎮静は「じっとして動かないでいてもらう」ことが目的となります。

鎮静をかける利点は
 基本的には全身麻酔と同じです。
@ 動物にとって、
医療行為に伴う苦痛や恐怖から解放してあげる。
A 
医療行為を迅速にかつ正確に行うことができる。

鎮静をかける欠点は
@ 一時的とはいえ、動物の基礎代謝を落とすことになる。

全身麻酔との違い
 麻酔に比べて、痛みは感じます。よって、
手術など強い痛みを伴う処置には鎮静だけでは不十分でやはり麻酔が必要です。
 鎮静薬の大きな利点の一つは、
拮抗薬(鎮静を覚ます薬)が存在することです。処置が終了したら、拮抗薬を用いて鎮静状態から回復させることが可能なので、鎮静状態が必要最小限で済みます。

現場では
 関節や頭部のレントゲン写真を撮影する時、ネコのシャンプー・カットをする時、その動物の性格で、とても臆病であるとか攻撃的であるとか医療行為に差支えがあるときに鎮静をかけます。
ただ、麻酔と同様、動物の一般状態が悪い場合は鎮静をかけることが危険でできないこともあります。


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9.内服薬


いわゆる「飲み薬」。治療の中心です。今回は、薬の種類ではなく、薬を身体の中に届ける手段の一つとして口から飲むお薬の話です。次回予定している「注射」と比較してみるとわかりやすいかと思います。

内服のメリット(利点)

@ 自宅で治療ができる。
 飼い主さんにとっても、動物にとっても病院に来ると言うことは、大変なストレスになります。おうちの普段通りの環境で治療ができるのは、大きなメリットです。
A 消化管を通る
 内服薬は胃や腸を通ります。胃の中、腸の中に直接作用するタイプの薬は、注射では効果を発揮できません。
B 痛くない
 注射と比べれば、痛みはありません。

内服のデメリット(欠点)

@ 消化→吸収の過程を経なければ体内に取り込まれない。

 口から投与された薬は口腔→食道→胃→小腸と進み、大部分の薬は小腸で吸収されます。その後、門脈→肝臓→大静脈→心臓と血液とともに流れて全身に行き渡ります。この一連の流れの中にトラブルがあれば、薬が目的の場所に到達しない可能性があります。例えば、
嘔吐がひどい場合は、薬を飲んでも小腸に到達する前に吐いてしまいます。また、腸の粘膜が痛んでいる場合は薬が腸から吸収されません。さらに、全身状態が悪く血圧が低下していたりすると目的の場所まで薬が十分届かないこともあります。患者さんの状態によって不確定要素が多いのが一番のデメリットです。
A 胃、腸などの消化管を通らなければならない。
 薬の種類によっては、
胃腸の粘膜に刺激になり負担になってしまう。
B 内服自体が難しいことがある。
 特に猫の場合、口に入れても出してしまう、食事に混ぜると感づいて食べてくれない、などと薬を飲ませることそのものが大変なことがあります。

まとめ
 
長期に投与が必要な薬は内服で与えるのが適しています。また、(薬をすんなり飲んでくれる子であれば)内服は肉体的精神的負担を少なく体内に薬を取り入れる手段です。しかし、注射に比べて、効果の即効性や、確実性は劣ります。
 その動物の性格によっては、うまく薬を飲ませられない場合もあるでしょう。その場合は必ず獣医師に申し出てください。


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10.注射


 さて、遂に「注射」の登場となりました。“病院”から連想される言葉でNo.1がこの「注射」ではないでしょうか。
そして、“注射”から連想される言葉は、痛い、怖い、針・・・  いいイメージのものはひとつもありません。では、どうして「痛くて、怖い」注射を治療に使うのでしょうか?


●注射の種類
 同じ注射でも、注射の目的や薬の種類によって、打つ場所を変えます。以下に代表的な場所を挙げてみましょう。
@ 皮下注射
  皮膚と、その下の組織(脂肪、筋肉など)の間に、針を刺して薬液を注入します。動物の場合、皮膚がダブダブしているので、皮下の空間がヒトよりも大きいので、この空間を有効に使えます。注射の中では一番痛みが少ない。また、薬液を注入する空間が大きいので、ある程度の量の水分を投与できます。ワクチンはこの皮下注射で接種します。

A 筋肉注射
  筋肉の中に針を刺して薬液を注入します。ヒトでお尻に注射をすることがありますが、それは筋肉注射です。皮下注射に比べて薬液の吸収が早く確実です。ただ、筋肉は密度の高い組織なので、注射液を注入する時に痛みを感じることがあります。

B 静脈注射
  静脈の中に針を刺して、血液中に薬液を注入します。身体全体に迅速に確実に薬を到達させるのには最適な方法です。血管の中に確実に針を入れなければならないので、技術と、動物の協力(大人しく動かないでいてくれること)が不可欠です。

●注射のメリット
 痛くて怖い注射をする理由は、以下の通りです。
@ 動物の身体の中に、確実に薬を届けられる。
   前述の内服薬に比べて、直接身体の中に薬液を入れるので、投薬は確実です。よって、薬の効果も内服薬に比べてより確実に得られることになります。
A 薬が消化の過程を経ないで身体に行き渡る。
   内服薬だと消化作用を受けて成分が変わってしまう種類の薬でも、注射で投与すれば、成分を変えないで身体に届けることができます。
B 消化器症状が強い場合でも、身体の中に水分や薬を届けられる。
   吐いたり下痢したりがひどい動物には、内服薬を飲ませても、吸収される前に体外に排出してしまいます。このような時は注射に頼るより他ありません。

●注射のデメリット
当然、デメリットもあります。
@ 痛い、怖い。
   肉体的、精神的負担です。動物でも、ヒトほどではないと思いますが、痛い、怖いは感じているでしょう。痛みや恐怖の程度は、その子その子の個体差や性格にもよります。
A 身体に傷がつく。
   針が通過するわずかな部分とはいえ、身体に傷がつくことは事実です。静脈注射の場合は、血管にも傷がつくことになります。
B 薬に対するアレルギー反応が出やすい
   これは、薬の吸収が早く確実なことの裏返しです。薬が早く身体に回る分、その薬に対してアレルギー反応が出る場合は早く強く出ます。
C 病院に来ないとできない処置である。

   内服薬に比べて手間がかかります。


  痛くて怖い注射も目的があってこそ行うものです。確かに“痛そう”、“かわいそう”ではありますが、注射をしなかった場合はさらに辛い症状が動物を襲うことになります。ちょっとだけ我慢してもらいましょう。


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11.外用薬

 直接体表に塗布する薬、いわゆる“塗り薬”です。主に皮膚病の治療に用います。よく「塗り薬は出してもらえないんですか?」と聞かれます。ヒトの皮膚病治療の場合、塗り薬が最も頻繁に使われます動物の場合は、少々事情が異なります。

外用薬のメリット
@ 患部に直接薬を塗るため、
病変部に確実に薬剤を届けることができる。
A 患部に直接薬を塗るため、
不必要な部分に薬剤を届けなくて済む。

外用薬のデメリット
@ 薬の届く範囲が限られている。広範囲の病変に塗るには手間と時間がかかる。また薬の量も多くなる。
A 動物の場合、薬を塗るとその部分を舐めたり引っ掻いたりする。

 とくに、デメリットのAは、とても大きな問題です。
薬の効果よりも、舐めたり引っ掻いたりする刺激の逆効果のほうが大きくてかえって症状が悪化するケースもあります
 塗り薬をつけるときは、ごはんやお散歩、要するに動物にとって楽しいことの前に塗ってあげるといいでしょう。そうすれば、動物の興味が塗り薬から他のことに向くので舐めたりかじったりしません。また、塗った後しばらく抱いてあげて気を逸らしてあげるのもひとつの方法だと思います。
 外用薬とは直接関係ありませんが、皮膚に怪我をしたり、手術をした後などの傷を、包帯でしっかり巻いてしまう方がおられます。ヒトの感覚だとその方がばい菌が入らなくて早く治るように感じますが、動物の場合少し違います。どちらかというと、何も巻かずに空気にさらしておいた方が治りが早いことが多いです。皮膚病に関しても同じ、ガーゼや包帯を巻くと、蒸れて状態が悪くなることがあるので注意して下さい。

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12.点眼薬


 「
」は動物の身体においてとても重要な臓器です。かつ、敏感でトラブルの多い臓器でもあります。点眼薬は、その重要で敏感な臓器、目に薬剤を作用させるための薬です。

点眼薬のメリット
 前述の外用薬とほぼ同じです。
@ 目に直接薬を落とすので、
確実に薬剤を届けることができる
A 目に直接薬を落とすので、
不必要な部分に薬剤を届けなくて済む

点眼薬のデメリット
 これも外用薬とほぼ同じです。
@ 
動物が協力してくれないと、点眼薬がつけられない
A 点眼薬をつけた後、
動物が目を気にして、眼球や結膜を2次的に傷つけてしまうことがある

目は敏感なので、点眼薬をつけたときの不快感は、皮膚に外用薬を塗った時よりも大きいようです。ただ、たいていこの不快感は一時的なものなので、点眼後しばらく注意してあげれば大丈夫でしょう。外用薬の時と同様、ごはんやお散歩など動物にとって楽しいことの前に点眼する。あるいは、点眼した後しばらく抱いてあげる、などで対処してください。

 私自身も子供の頃、目薬を注すのはとっても苦手でした。1滴目の中に入れるのに5,6滴は無駄にしたでしょう。動物でも目薬を入れられるのが嫌だという気持ちは良くわかります。でも、それを上回るメリットもあるので、なるべくがんばってつけてあげましょう。

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13.処方食


 処方食とは、病気の管理および治療を目的とした食餌です。その病気に適した組成に作られています。

なぜ処方食が大切なのか
 
処方食が必要な病気はほとんどが慢性疾患です。慢性疾患は長期間に及ぶ治療管理が必要になります。食餌は毎日身体の中に取り込まれるものです。食餌がいいものか悪いものか、長い目で見たときに大きな差となって現れてきます。

処方食を食べていれば病気が治るのですか
 処方食自体に病気を回復させる効果はありません。しかし、処方食で痛んだ臓器に負担をかけないことで、身体本来の回復能力を手助けすることは十分期待できます。

処方食は喜んで食べてくれないんですけど・・・
 確かに、概して、
処方食は薄味です。これは、ヒトの食べ物と一緒です。病院の食事と、レストランの食事ではどちらが美味しいかといえば、もちろん後者です。でも、毎日その食事を続けていた場合はどちらが身体にいいか。これも、いうまでもないことですね。

処方食は高いんだけど・・・
 販売目的の食餌と比べれば、確かに高いですよね。これもヒトの食べ物と一緒ですが、今は安くて美味しい物がたくさん売っています。ただ、それを
毎日食べ続けたら身体にいいかどうか。病気を悪化させて治療費がかさんだ方が結果としては高くつきます。そして何より、お金では買えない健康を失ってしまいます。

他のものと混ぜて食べさせてもいいんですか?
 
なるべくなら処方食だけであげてください種類によっては他のものを混ぜてしまうと効果がなくなってしまうものもあります。他のものを混ぜてもそれなりの効果が期待できるものもあります。詳しくは処方してくれた獣医師にお尋ね下さい。

「医食同源」毎日食べるものは健康管理、病気の管理に大変重要です。注射や薬のように即効性がないので、効果がわかりにくいのですが、効果は必ずあります。そして何より、薬と違って副作用がありませ。がんばって続けてあげましょう。

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14.手術


 メス、外科的器械を用いて患部を切開し、治療処置を施すことです。ほとんどの場合、麻酔をかける必要があります。

 「手術は
かわいそう」「手術は痛そう」「手術は危険が伴う」「手術したらストレスになる」。手術の話をするとだいたいこんな答えが返ってきます。すべて“そのとおり”です。

 確かに
かわいそうです。ヒトでも手術されるのが好きなヒトはほとんどいないでしょう。
 確かに
痛いです。麻酔をかけたり、鎮痛剤を使ったりして痛みは抑えますが、身体に傷をつけるわけですから、多少なりとも痛みは伴います。
 確かに
危険が伴います。麻酔をかけることは「」の状態に近づくことになるので危険はゼロではありません。(詳しくはこのぺージの7.全身麻酔を参照してください) また、日常空気に触れない部分が一時的にでも空気に曝されることになるので感染の心配もあります。
 確かに
ストレスになります。麻酔、身体を切る、入院とすべてが非日常的なことです。動物に対してストレスは当然かかってしまいます。

 かわいそうで、痛そうで、危険で、動物にとってストレスになる手術をどうしてするのか、もちろんメリットがあるからです。
 まず、現場(病気の部分)あるいはその近辺、周囲を
直接見て確認できる。これは、現在の病状を把握する上で非常に重要な情報源です。特に体腔内など、外から見えない部分に関しては、直接見るのと見ないのとではぜんぜん違います。
 さらに、その
現場で仕事ができる。当たり前のようですがとても重要なポイントです。その現場に行って、そこで何かをしなければ解決に至らないことはたくさんあります。

 
手術のマイナス面、特に危険度とストレスは、その動物の性格、年齢、健康状態などで大きく異なります。また、どうして手術が必要なのか、別の治療方法があるのかないのか、手術をしなかった場合どうなることが予想されるのか、いろんな情報を総合して手術を受けるかどうかを判断してください。獣医師の説明をよく聞いた上で最終的に決断するのは飼主さんです。よく考えて下さい。


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15.浣腸

 肛門から直腸に浣腸液を注入します。排便を促すための処置です。基本的には人間と同じです。経験したことのある方はどんな感じかわかると思います。
 ほとんどの場合は「
便秘」の治療目的で行われます。その他、熱中症で体温を下げるために冷たい液体を浣腸することもあります。

 便秘の治療で浣腸する場合、目的は
@ 便意を刺激する。
A 便を柔らかくする。

B 便の通過をスムースにする
。  の3つです。
 浣腸液を注入した後は、便意を催し、排便動作に入ります。ヒトの場合だと、浣腸液を入れた後「10分くらいは我慢してくださいね」と言われますが、動物にはわからないので(ホントは我慢してくれるとより効果的なんだけど)すぐに排便しようとすることが多いです。そしてうまくいけばウンチが出ます。でも、入れた浣腸液がそのまま出てくるだけのこともあります。場合によっては浣腸を繰り返すこともあります。また、最初の排便動作ではウンチが出なかったけど、時間が経ってから出ることもあります。

 よくある質問は、「
人用の浣腸で自宅ですることはできますか?」ということです。
 答えは「できます。」
 ただし、
診察を受けてからにしましょう。ほんとに便秘なのか、浣腸で効果が期待できる便秘なのか、そこを確実に診断してからでないと効果がなかったり、却って動物を苦しませる結果になったりします。
 浣腸液は薬局で売っているヒト用あるいは小児用をそのまま使っていただいて問題ありません。ただ、ノズルが短いので浣腸液が奥の方まで届いていないことがあります。もちろん奥まで届かなくても、目的が達せられる、すなわちウンチが出てくれればOKです。でも、動物病院で行う浣腸よりは効果が少ないことが多いので、過信は禁物です。
 でも、もし自宅でできるのであれば、いろんな意味でいいことだと思う。(通院の手間と時間がかからない、治療費もかからない、動物に治療のストレスが少なくて済む、自宅だと動物が落ち着いてウンチすることができる、など) しっかりと診断と指導を受けていれば、失敗しても危険は少ない処置だと思うので、トライしてみる価値はあるかも。

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16.シャンプー

 ヒトの場合、お風呂に入ったり、髪の毛をシャンプーしたりするのは、主に身体をきれいにするのが目的だと思います。もちろん、動物のシャンプーにも、皮膚や被毛をきれいにする目的もありますが、時として、治療のひとつとして、シャンプーをすることがあります。主に
犬の皮膚病の時に、薬用シャンプーでの治療を行います。
 シャンプーの治療としての目的は、
@皮膚、被毛の表面を衛生的にするA皮膚、被毛に付着しているアレルゲンとなる物質を取り除くB皮膚、被毛の保湿。などです。
 シャンプーの方法は通常のシャンプーと同じです。
十分乾燥させて、水分を残さないように気をつけてください。
シャンプーの回数は、その症状によってさまざまですが、
個人的な意見としては、最高でも週に1回、それ以上はシャンプーしない方がいいと思います。
 
あまり痒みが強いときもシャンプーは控えた方がいいでしょう。
 治療用のシャンプーにもいろんな成分のものがあります。皮膚の状態、体質などにより適しているものが異なります。しっかり診察を受けて処方してもらうといいでしょう。
 猫はたいていシャンプーされるのが嫌いです。また、治療としてのシャンプーが必要なケースは極めて稀です。無理しない方がいいですよ。ウサギも濡れるの嫌いなので、シャンプーしない方がいいと思います。

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17.化膿創切開排膿洗浄

 膿が貯まる」と言う表現を耳にしたことがあるでしょう。ばい菌が身体の中に入り、白血球がそのばい菌と戦ってできたものが膿です。膿を持つことを化膿といいます。動物の場合は、肛門嚢の化膿、歯周病で歯の根が化膿する、猫のけんかでの傷が化膿した、などが良く見るケースです。
 化膿して膿が貯まっている場合、時間が経つと自然に自壊して穴が開いて、膿が流れ出てくることが多いのですが、
膿が出るまでが痛くて辛いのと、膿が出る前に感染が広がってしまう危険性があります。
 そこで、皮膚に切開を加えて中の膿を外に出してしまい、膿が貯まっていた所をきれいに洗浄する処置を施してあげます。そうすることで、
早く苦痛を取り除くのと同時に、速やかな回復が期待できます
 最近では、企業や自治体の不祥事があった後に、「
うみを出し切って、再生を図りたい」と新社長が決意を語る場面を時々見ますが、これはこの処置に由来する比喩です。
 化膿している場所、程度、動物の性格、などを考慮し、時には鎮静や麻酔をかけて処置を行うこともあります。処置した後はしばらく切開創から膿が出ますが、それは出た方が回復が早くなるので良いことです。


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18.入院

 言うまでもなく、病院に滞在して診療を行うことを入院と言います。ヒトの医療でも同じですが、入院をするときは外来診療では十分にできないことを行うことが目的があり、病状が重篤な場合も少なくありません。ご自身が入院したことがある方はわかると思いますが、たとえ治療のためとはいえ、入院はあまり気持ちのいいものではありません。「できることなら、うちの子には入院はさせたくない。」飼主さんの気持ちも最もだと思います。

入院のメリット
@ 長時間の治療ができる。
点滴などは時間をかけてゆっくり投与したほうが身体に負担が少なくより効果的なことが多いです。
A 長時間の観察ができる。
もちろん、飼主さんからお家での様子を聞き取りますが、
言葉で聞くのと実際に見るのとでは違うことがあります。また、時間の経過による症状の変化が確認できることも入院のメリットです。手術後、麻酔がしっかり覚醒するか、出血が無いかなどを確認するために入院が必要なこともあります。
B 症状の急変に迅速に対応できる。
自宅にいるとどうしても病院まで連れてくる時間がかかってしまいます。その点、病院にいればすぐ治療にかかれます。
C 移動のストレスが無い。
車の嫌いな子がいます。続けて治療が必要な時、毎日車で通うよりも入院のほうがストレスが少ないことがあります。

入院のデメリット
@ ストレス。

これが最大のネックです。ただ、ストレスはその子その子の性格でいろいろです。全く気にしないで普段と変わらない子、緊張してごはんも食べない水も飲まない子、吠え続ける子、恐怖で凶暴になる子。また、そのストレス状態が、1〜2日だけの子もいるし、1週間続く子もいます。
A もし、かわいそうな結果になってしまった時、いわゆる「看取ってあげる」ことができない。
「最後は住み慣れたお家で」
と誰もが願うことですが、入院中に急変があった場合はそれが叶わなくなってしまいます。

面会に行ったほうがいいか?
 これも、その子の性格や病状によっていろいろです。時に、
面会後、後追いして吠え続ける子もいます。病院によっては後追いで疲れてしまうとよくないから面会をさせないところもあるみたいです。でも概して、面会したほうが動物は元気になるので当院ではなるべく会いに来ていただくようにしています。ただ、家族の方がそれぞれ一人一人で面会に来られるとちょっと困ります。入院室には他の患者さんもいますし、その治療もあります。面会はなるべく1回で短くお願いしたいものです。

入院するか通院にするか、これは各々のケースで異なるので、病状、動物の性格、治療にかかる時間と期間、など総合的に判断して獣医さんと相談して決めてください。もちろん、ご意見ご希望があれば申し出てください。
あと、「退院=完治」と思われている方がおりますが、これは間違えです。もちろん、そのような場合もありますが、ほとんどの場合、引き続き注意深い経過観察と治療が必要です。


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19.通院

 言うまでもなく、病院に通って治療を受けることです。通院がどの程度動物にストレスになるか、これは飼主さんに判断していただくことになります。

通院の動物に与えるストレス
@ 移動ケージに入れる。(このこと自体を嫌がる子も結構います。)
A 移動そのもの。(車酔いなど)
B 待ち時間。
C 診療そのもののストレス。

通院のメリット
@ (入院と比べて)
動物が家で過ごす時間が長くなる。
A 診療を受けられる。(当たり前のようですが大切なことです。投薬だけで家で様子を見ていて、飼主さんが気づかずに状況が悪化していることがあります。)

 概して
入院治療より、通院は、はるかにストレスは少なくて済みます。しかし、その子その子の性格によって、病院に連れてくるだけでも大変なストレスになってしまうこともあります。
 ただ、
病院に連れて来なければ、診察はできません。検査もできないし、治療も内服薬等に限られてしまいます。
 病院に連れて行くのはかわいそうと思う気持ちもわかりますが、実際診察しないとわからないこともたくさんあります。症状が変わったり、獣医師の指示があったときは、受診しましょう。


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20.皮下補液

 動物は人間と比べて、皮膚がダブダブしています。そのため、皮膚の下、いわゆる皮下組織にゆとりがあります。この皮下組織のゆとりを利用して、水分や栄養分の補給を行うのが皮下補液です。
 皮下補液は、食欲が無いとき、脱水症状の時など、身体に水分を供給が必要な時に行う治療です。

皮下補液のメリット
@ 短時間で治療が終わる。

   通常の通院治療で行います。補液量によっては少し時間がかかることがありますが、長くても10分程度です。

皮下補液のデメリット
@ 補液量に限界がある。
   ゆとりがあるとはいえ限られた皮下の空間です。補液量には制限があります。
A 吸収されないことがある。
   皮下組織に広がって吸収されることを前提とした治療ですが、
一般状態が悪く、基礎代謝が落ちている動物では、投与した水分が皮下組織に残って吸収されないことがあります。そうなると、治療効果が期待できません。
B 連続して治療できないことがある。
   数日であれば問題ないのですが、それ以上となると、時に皮下に
無菌性化膿硬結などといった炎症反応が生じてしまうことがあります。これは、皮下補液の間隔を空けることで回避できることが多いので、長期に渡る治療が必要な時は、そのあたりを考慮しながら治療を進めてゆきます。

 
通院で治療可能なので、非常に便利な方法です。しかし、治療の「格」としては、次に示す静脈内点滴の方が上です。動物の症状や状態によっては、静脈内点滴が必要な場合もあります。
 なお、皮下補液の後、補液した部分を動物が気にして舐めたり掻いたりすることがありますが、大抵の場合問題ありません。


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21.点滴

 液体を静脈に少しずつ時間をかけて注入する治療です。前述の皮下補液を「皮下点滴」と言っている病院もあるようですが、ここではあくまで静脈に点滴する治療について述べます。

 動物は人間と違ってじっとしていてくれないので、点滴をするのにも工夫が必要になります。先ず、「
留置針」という柔らかい素材の短い管を静脈に入れ、固定します。これによって、動物が多少動いても、動物を傷つけることなく確実に静脈に治療液を注入できます。また、その子によっては、留置針を齧って外そうとする子もいます。そんな時は、エリザベスカラーをつけて留置針を保護することもあります。

前述の皮下補液と比べて点滴のメリット、デメリットは、
点滴のメリット
● 確実に薬液が体内に届く。(
皮下補液だと動物の状態によっては吸収されないことがある。)
● 薬液の注入速度を変えられる。(皮下補液だと、吸収速度は動物の状態しだい。)
● ゆっくり時間をかけて点滴すれば、
循環器系への負担が少なくて済む。

点滴のデメリット

○ 時間がかかる。
病院にいる時間が長くなる。動物にとってはストレスとなる。)
○ 動物の協力が不可欠。(暴れて留置針がつけられない子、動いて点滴チューブがすぐに外れてしまう子は予定している治療ができないこともあります。)
○ 治療費。(皮下補液よりは高い。)

いろいろな制約はありますが、
治療効果は皮下補液に比べたらはるかに期待できます。重篤な病状、特に口から食べ物や水分を受け付けない時には、点滴は不可欠なものです。もちろん、動物の性格や、病状にもよりますが、先ずは2〜3日点滴して、回復してきたら徐々に皮下補液や内服薬の治療に切り替えてゆく、そんなパターンが多いです。


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22.エリザベス・カラー

 動物の首の周囲に巻きつけるよう装着するに、パラボラアンテナのようなものをエリザベス・カラーといいます。実際に装着したことのある方もおられると思いますし、他のワンちゃん、ネコちゃんがつけているのをみたことがある方も多いと思います。最近では、大きさ、形体、材質などいろんなものがあります。
 エリザベス・カラーを装着する目的は、
@ 動物が自分で自分の身体を舐めたり、齧ったりするのを防ぐ。
A 動物の視野を制限する。
B ヒトが動物に咬まれないために装着する。

以上が主なものです。
 動物病院で、治療や検査のときに一時的に装着する場合はほとんどがAもしくはBが目的です。また、自宅で装着する時は、@の目的のことが多いと思います。
 エリザベスカラーのデメリットとしては、
@ ストレス
A 重い

などです。
 特に@のストレスは時に大きな問題となります。
ストレスの程度はその子その子の性格によるところも大きく、ほとんど気にしない子もいれば、カラーをつけると全く動かない、食べないという子もいます。また、カラーを外そうと死に物狂いで暴れる子もいる。でも時間が経つと慣れて気にしなくなることもある。なかなか難しい。
 実際に自宅にいる時でもエリザベスカラーを装着してもらうのは、皮膚病の時か手術の後がほとんどだと思います。
 個人的には、エリザベスカラーを着けさせるのは、あまり好きでないので、なるべく着けないで済むように他の方法を考えます。でも、必要なケースはあります。そんな時は、しょうがないので、我慢してもらってます。



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23.包帯

 ヒトの治療では、包帯を巻くのはポピュラーな処置です。動物では、ヒトほど使いません。個人的には、ほとんど使いません。その理由は、@ 安定しない。 A かじって取ってしまう。 B 蒸れる。 
 傷があるとつい包帯を巻きたくなってしまいます。実際、ご自身の判断で包帯を巻いておられる飼主さんもいらっしゃいます。でも、
ほとんどの場合、傷は空気にさらしておいたほうが治りが早いですよ。獣医師の指示がない限りは、包帯を自分で捲かないようにしましょう。


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24.貯留液の穿刺排液

 言葉だけ聴くと難しく感じますが、何のことはない、液体が貯まっているところに針を刺して吸い取るだけのことです。日常診療でよく行う穿刺排液は、皮下に貯まった漿液、膀胱にたまった尿、胸腔に貯まった「胸水」、腹腔に貯まった「腹水」などです。

 貯留液の検査のために少量採取する場合と、治療のためにある程度多量採取する場合があります。貯留液がどこにどれだけ貯まっているかは、視診触診、体腔内であれば、レントゲン超音波などで事前に確認します。それでも刺す針の到達先は直接目で見ることができないので、
いくらかの危険はどうしても伴うことになってしまいます。また、動物の身体に針を刺すので「痛い」。針を刺したときに動かれると「危ない」。一度に大量の液を抜くと循環不全を起こすことがごく稀にある。我々獣医師にとっても緊張する処置です。場合によっては鎮静もしくは麻酔をかけて行うこともあります。

 貯留液が体腔内にあるときは特に、針を刺す行為がとても痛々しく且つ恐ろしく感じられると思います。刺す我々にとっても何回やっても毎回緊張します。しかし、
貯留液はその存在自体が、動物の生活する上で悪影響のあるものです。また、貯留液が貯まるということは、身体の中で、普通ではない、何らかの異常が存在している。その異常を特定するのに、貯留液の検査から得られる情報はとても重要です。痛そうな処置ではありますが、診療を進めていく上で、大切な処置です。かわいそうだけど、我慢してもらいましょう。


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25.爪切り

 日常の診療の中で毎日行っている爪切りですが、実は個人的にあまり好きな作業ではありません。大人しく協力してくれる動物もいますが、そうでない子も時々います。また、注射や採血は大人しく我慢できるのに爪切りとなると豹変して暴れだす子もいます。病院では大人しいけど、自宅では暴れて飼主さんには絶対に切らせないという話もよく聞きます。逆に家では大人しいけど病院だと暴れる子もいます。

家で切るにはどうしたらいいか?
よく聞かれるのですが、
100%確実な方法はありません。強いて言えば、
犬の場合
エリザベスカラーを着けて視野を遮る。飼主さんが噛まれないようにする意味もある。
口輪をはめる。これで観念する子もいる。噛まれないという意味もある。
猫の場合
エリザベスカラーをつける。効果は犬の場合と同じ。
首の後ろを摘まんで伏せの姿勢のまま切る。
共通
一度にすべての爪を切ろうと思わないこと。地道に1〜2本づつ何回もあるいは何日もかけて切る。

 ただ、実際問題、
本当に嫌がる子は、何をしても難しいと思う。病院やペットショップだと大人しく切らせる子なら、切ってもらう方が動物にも飼主さんにもストレスにならなくていいかも。

 年をとってあまり動かなくなった子は、
爪が伸びすぎて巻き込んで自分の指に刺さってしまうことがあるので要注意。若い子でも狼爪(内側の“親指”に相当する爪)は地面に着かないので伸びすぎることがあります。そうなったら、場合によっては麻酔をかけてでも、切ってあげないとならないので、動物病院へ。


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26.耳そうじ

 「耳そうじは、何日に1回くらいしたらいいのですか?」「おウチでも耳そうじしたほうがいいんですよね?」「この子嫌がって耳触らせないんです。どうしたらいいでしょうか?」
 耳そうじに関する質問は毎日のようにあります。
答えはいろいろ。その動物の外耳道の状態、性格、体質、それぞれを総合的に判断したうえで答えていますが、「まったくしなくても大丈夫」な子もいれば、「3日に1回はきれいにしてあげてください。」の場合もある。
ここでは、概論をかきます。

● 犬も猫も、ウサギも、ほとんどの子は、耳そうじが嫌いです。
 嫌いだということは、動物にとっては
ストレスになるということです。ストレスをかけて、我慢してもらってまで耳そうじする必要があるかどうか、再検討してみて下さい。

● あまり、一生懸命きれいにしすぎると、かえって耳道を擦り過ぎて炎症を起こすことがあります。
 もちろん、きれいになった方が望ましいのですが、あまりムキにならないように。ある程度汚れが取れれば、目的は達成されていますよ。

● 奥に深く入れ過ぎて、鼓膜を破ってしまう可能性は極めて低い。
 外耳道は、垂直耳道水平耳道と呼ばれている部分があります。すなわち、入口から見ると、
先ず真っ直ぐ下に向かい、途中で直角に曲がって鼓膜に到達します。よって、最初の真っ直ぐ下に向かっている部分をそうじしている限りは鼓膜に触ってしまうことはありません。

 もちろん、耳はきれいな方が望ましい。でも、なかなか完璧にきれいにはできないですよ。あと、
一般に思われているほど、耳が汚いから外耳炎になるわけではないんです。逆に、外耳炎のときは、耳そうじだけでは治らない。
 だから、あまり無理しないで、動物たちの機嫌を損ねない程度にそうじしてあげて下さい。そして、それでもどうしても汚い、臭いときは、診察を受けて下さい。
 耳そうじを家で大人しくさせるコツ。これも決定的な方法はありません。口輪ができるワンちゃんは、それで観念して大人しくなることはありますので、トライしてみては。


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27.フルオレセイン染色検査

 目の検査です。角膜表面の傷を確認する検査です。
 眼球の表面は角膜という透明な硬い膜で形成されています。角膜の表面は本来滑らかで、正常であれば染色液をつけても色がつきません。しかし、角膜表面に傷がつくと、傷の部分に染色液が貯まります
傷の有無、場所、大きさを確認する検査です。

方法

 眼球表面にフルオレセイン染色液を着け、全体に行き渡らせた後に、特殊なライトを当てて目視します。この検査によって、
肉眼で直接見ても検出できない傷が描出されることもよくあります。

 目がショボショボしているときに、
角膜に傷があるのかないのかで、治療に用いる点眼薬の種類が変わります。時間もさほどかからず、動物にも負担が少ない検査です。他の眼の検査は、特殊な道具、設備、技術、経験が必要とされるものが多いのですが、この検査は比較的簡単安全に行え、貴重な情報が得られます。


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28.眼圧測定

眼球の内圧を測定する検査です。イメージとしては、眼圧が低い→眼球がしぼんでいる。眼圧が高い→眼球が膨張している。
眼圧が高くても低くても問題です。眼圧が高い場合は緑内障が疑われます。

検査方法
 特別な検査器械を使って測定します。当院では、眼球に端子が触れ、その反発力で眼圧が測定できる器械を使っています。麻酔は必要なく
動物はほとんど不快感も感じません。ただ、ほんの数秒、動かないで静止してくれることが必須です。通常の診察時間内に実施可能です。

眼圧の変化が緩徐である場合、眼圧が高くなっても不快感を感じにくいようです。眼圧が高いのを放置すると、眼の機能に影響が出てくる心配があります。症状が出る前に、動物が不快感を感じる前に、治療してあげたいものです。

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29.膣スメア検査

メスのワンちゃんの陰部からのおりものを、細胞を染色してその形態を観察します。発情期であれば、交配適期がいつごろかを推定するのに有効です。不正な出血、おりものの時には、感染、炎症、腫瘍の可能性を調べます。

検査方法
 おりものを少量採取して、スライドグラスに塗抹します。細胞を染色した後、顕微鏡で観察します。交配適期を判断するときは、有核細胞と角化細胞の割合で判断します。不正な出血、おりものの時は、好中球、細菌、腫瘍細胞などを観察して病態を推測します。

比較的簡易な手技で、ワンちゃんにかかる負担も少ない検査です。


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30.ACTH刺激試験

副腎皮質機能亢進症副腎皮質機能低下症を診断するための検査です。ACTHとは、副腎皮質刺激ホルモンのことです。

検査方法
 午前中(できたら9:00〜10:00)に行います。まず採血。そして副腎皮質刺激ホルモンを注射1時間後(猫は30分後)に再び採血。
 それぞれの
コルチゾール値を測定し、副腎皮質刺激ホルモンに対して、副腎が適切に反応しているか(正常)過剰に反応しているか副腎皮質機能亢進症の疑い)、反応が不足しているか副腎皮質機能低下症の疑い)を診断します。

 採血が2回必要なこと、少々費用がかかること、この検査だけでは確定診断にならないこと等の不便はあるものの、比較的動物にかかる負担は少ない検査だと思います。
副腎皮質機能亢進症、副腎皮質機能低下症、いずれも(特に犬では)珍しい病気ではなく長期的管理が必要な疾病なので、疑わしいときはしっかり確認しておいた方がいいと思います。
 ほとんどの場合この検査に至るまでに、他の検査も行われているので、検査検査で動物がかわいそうって思ってしまうんだよね。費用もかかるし・・・。でも、検査が必要であれば、頑張ってもらいましょう。


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31.甲状腺ホルモンの検査

甲状腺機能亢進症甲状腺機能低下症を診断するための検査です。血液中のホルモン濃度を測定します。

検査方法
 採血
を行い、ホルモン濃度を測定します。当院では、検査センターに測定を依頼しています。

 トリヨードサイロニン(T3)、サイロキシン(T4)遊離サイロキシン(fT4) が測定可能です。さらに、
甲状腺刺激ホルモン(TSH)も加えて診断することもあります。
 当院では、
犬の甲状腺機能低下症の診断のためには、TSHとfT4、猫の甲状腺機能亢進症の診断のためにはT4とfT4を測定しています。ただ、血液の量や経済面で、検査項目を減らすこともあります。

最近は動物の検体を専門に扱ってくれる検査センターが増えてきたので、利用しやすくなりました。(ヒトの検査センターの結果だと甲状腺ホルモンの値が低く出る傾向にある気がします。) それでも、外注検査なので、弱冠、費用はかかってしまいます。ただ、甲状腺機能亢進症にしても甲状腺機能低下症にしても、
ホルモンを調節する薬を長期間投与する治療になるので、最初の一歩、すなわち診断は多少費用がかかっても確実に行うべきだと考えています。


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32.視力、聴力の検査

 最近、ペットに愛情をかけて大切に飼っている飼主さんが多く、動物も長生きするようになりました。彼らも人間同様、加齢とともに五感は鈍ってくるようです。「この子の眼は見えているんでしょうか?」「最近耳が遠くなったみたいなんだけど、動物でもそんなことあるんでしょうか?」よく尋ねられます。 嘘偽りなくほんとに真面目に答えるならば、「本人に聞いてみないとわかりません。」となります。でも、いくつか見当をつける方法はあるので紹介してみたいと思います。

視力があるか?
@ 対光反射
  
眼に強い光を当てて、瞳孔が小さくなるかを観察する。普通は瞳孔が小さくなる。家でするには、懐中電灯を当ててみる、あるいは、明るい方向(例:太陽)に顔を向けて瞳孔の大きさを観察するといいと思います。
A 何か物を、あるいは手でもいいですが、ゆっくりと眼に向けて近づけていく。見えていれば、眼に接触する前に瞬きする。ただ、早く動かしすぎると風が起こり、眼が風を感じて瞬きしてしまうことがある。また、物がまぶたに触れると瞬きするので、注意してください。
B 動物を抱き上げて、顔を壁に向け、徐々に近づける。
眼が見えていれば、顔が壁に当たる前に、前脚を前に出して壁を抑える、あるいは抑えようとする。
C 動物とヒトの間に、色々な物を置く。その物を避けてジグザグに歩かないとヒトの所に到着できないようにする。その上で、呼ぶ、もしくはおいしいもので誘う。
動物が、物にぶつからずに避けてヒトの所に到達できるか否か。
D 紙くずを丸めたものを動物の前に落してみる、あるいは横切るように転がしてみる。動物が眼で追うかどうか。
 
いづれも、精度の高い検査ではなく、どの程度見えているのか見えていないのかまでは検出できません。でも、参考にはなると思います。簡単にできるので、お宅でやってみて下さい。

 他には、日常生活の様子から推測することです。あまり動かなくなった、お散歩の時歩くのが遅くなった、今までおやつの時には一目散に走ってきたのが、最近は気がつくのが遅い。頭を撫でてあげると、時々、驚いたり、怒ったりするようになった、等々。でも、これらの症状は単に年をとっただけでもなる症状なので、判別が難しいですね。

最近では、動物眼科の専門医もいらっしゃるので、診てもらうのもいいと思う。

聴力があるか?
 これは、視力よりもさらに検査が難しく、精度が低い。
@ 動物の視野に入らないところで、手をたたくなど音を出して反応を見る。高い音は聞こえるけど低い音は聞こえにくいなど色々なケースがあるので、異なる音を試してみるといいと思う。

 あとは、やはり日常生活の様子から推測します。今まで、飼主さんが帰宅すると、車の音やエレベーターの音で察知して玄関で待っていたのが、最近は部屋に入ってからやっと気づくようになったとか。

視力、聴力いづれも残念ながら白黒はっきりという検査はないんです。今後、開発されるといいんだけど。



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33.固有知覚反応

 主に
神経の働きを診るための検査です。道具も必要なく簡単に行える検査です。

方法
 動物を普通に立たせた状態で、1本の足を“甲”の部分が着地するように着かせます。甲の部分が床に着いていると立ちにくいので、動物はすぐに足を着き直し、パットの面が床に着いている正常な姿勢に戻します。4本の足、それぞれに同様の検査を行います。

異常
 
甲の部分を床に着けたまま足を元に戻そうとしないで立ち続けていれば異常です。

 神経学的検査の最も基本検査の一つです。この検査で異常があれば、
足の先〜脊髄〜脳 のどこかに異常が生じているわけですが、その部位や病態に関しては別の検査を行わなければなりません。しかし、道具も手間も時間もかからず、動物にも負担が少ないので、大変有用な検査です。ミニチュア・ダックスに多い椎間板ヘルニアを疑った時には必ず行います。
 お宅でもできるので、動物の歩き方がおかしいと思ったら、この検査してみるといいと思います。もし異常が見つかったら、必ず動物病院を受診して下さい。
神経の異常を来す病気は、重篤になる危険があるので、自分で判断せずに獣医師に診てもらった方がいいですよ。

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34.手押し車反応 体位伸筋突伸反応

神経の働きを調べる検査です。

方法
手押し車反応
 後足、おなかの部分などを支えて、「手押し車」のような状態にして、前足で歩行させる。
 上手く歩行できれば大丈夫。

体位伸筋突伸反応
 動物の胸のあたりを持って後足で立たせる。その姿勢で、尻もちを着かせるようにゆっくり動物の体を後方に倒す。
 正常であれば、後足の位置を変えて、
尻もちを着かないように踏ん張る。

 これも神経学的検査の基本の一つ。おかしいな?と思ったら、動物病院で診察を受けましょう。


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おまけ


2代目看板猫のランジェロ 

満4歳になりました
「まだ子猫?」とよく聞かれる。

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